2009年10月12日月曜日

『ジゼル』とボードレール

 
〆(・愛・ )
「バレエの歴史」佐々木 涼子 (著)、読了。
ふむふむ~っと思った豆知識を2つ。

まず、『ジゼル』の台本を書いたゴーチエと、ボードレールの『悪の華』について。

P.186
『ジゼル』というバレエの最大の魅力は何かといえば、結局は台本の質のよさではないかと思う。物語の奥が深いのだ。発想のもとになったのはハイネの『ドイツ論』とユーゴーの詩だが、しかしそれは単なるヒントにすぎない。『ジゼル』の物語のほんとうのおもしろさは、それらを普遍的な人間心理のドラマにまで掘り下げたところにある。

そもそも、『ジゼル』の台本は、カルロッタ・グリジという天才少女の舞台を見て夢中になったフランスの詩人テオフィル・ゴーチエが、彼女の為にシナリオを書き、オペラ座に持ち込んだ企画なのだそうです。

Carlotta Grisi カルロッタ・グリジ dans La Esmeralda de Jules Perrot. Lithographie de Joseph Bouvier (1844).wiki

テオフィル・ゴーチエ(1811-1872)はフランスの詩人で、同時代を生きていたボードレール(1821-1867)にも少なからず影響を与えました。「バレエの歴史」にも書いてありましたが、ボードレールは『悪の華』の巻頭で献辞を載せています。ゴーチエもボードレールの死後、追悼文を書き新版『悪の華』の序文としています。

ボクの本棚にある「世界文学大系33筑摩書房」より引用すると、

瑕瑾(かきん)のない詩人
フランス文学に於ける完全な魔術師
わが親愛な 畏敬する
先生であり 友である
テオフィル・ゴーチエに
最も深い謙虚な
気持ちをもつて
これらの病弱な花々を
私は献げる
C.B.

インターネットでみつけたDédicace原文
http://www.ac-strasbourg.fr/pedago/lettres/fleurs/

Au Poète impeccable
Au parfait magicien ès lettres françaises
A mon très-cher et très-vénéré
Maître et ami
Théophile Gautier
Avec les sentiments
De la plus profonde humilité
Je dédie
Ces Fleurs maladives
C.B.

まとめ。
ボードレール『悪の華』のテオフィル・ゴーチエとは、バレエの『ジゼル』の台本を書いた人でもある。


〆(・愛・ )
2つ目は、有名なドガの『踊り子』の絵について、なぜ男性ダンサーがいないのか。

バレエのレッスン(1874年頃、オルセー美術館所蔵)wiki

エドガー・ドガ(1834 - 1917)は20年以上にわたって、オペラ座、レッスン室や舞台の袖でダンサーたちを見続けていたそうですが、彼は男性ダンサーを描かなかったのではなく、当時のオペラ座には現実的に男性ダンサーが少なかったようなのです。

p.227
一八九一年、ある代議士がオペラ座の予算に関して議会で発言し、「男性ダンサーと呼ばれるキテレツな存在」の役目は女性ダンサーを運ぶだけ。それなら、同じように運んでも一晩の賃金が三、四フランですむバスの運転手を代わりに雇ってもいいのではないか、と言ったほどだった。

そして、女性ダンサーが男性役を踊ったり、バレエ学校に男の子が少なく技術が進歩しなかったなど、さまざまな要因も重なったようです。

まとめ。
エドガー・ドガが描く、男性ダンサーと踊る『踊り子』たちも観てみたかった。

〆(・愛・)ノ
さて、ナミパリ聞こうっと。おーえい!