「悲しみよ、こんにちは!」 P11.で、次の段落です。
Cet été-là, j'avais dix-sept ans et j'étais parfaitement heureuse. Les «autres» étaient mon père et Elsa, sa maîtresse.
「その夏、わたしは十七歳だった。そして私はまったく幸せだった。
私のほかに、父とその情人(アマン)のエルザがいた。」 朝吹訳 p6
「あの夏、わたしは十七歳で文句なく幸せだった。
ほかには父と、その愛人のエルザがいた。」 河野訳 p9
こういうのどう訳すのかなあ。 と思う、《autres》。 意外と、さらりと訳されていますが、Les «autres» 。 実は、ひとつ前の行に、同じ単語、des autresが出てきます。 ここに気がついているかどうかで、訳がぜんぜん違うのです。
「私をほかの人たちから離れさせる」朝吹
「私を人々から離れさせる」河野
セシル+ «autres» の構図を考えるなら、 すんなり「ほかの人たち」なのだと思います。「人々」では父でもエルザでもない誰かになってしまいます。
また、冒頭の訳は、「その夏」の方が客観性が適正で、「あの夏」ではセシルの内面に入りすぎています。
それにしても、17歳のもつ、妙な冷たさが心地良い、第1章のはじまりですね。感受、感謝。